ギリシャ危機についてのニュースを読む為の背後関係

世間の興味はイタリアとかの方に移ってしまったけど。情報を集めたものの、そのままとっ散らかしていたので、まとめる。。
 

危機:導入部

ギリシャは有史以来の放漫財政(後述)を続けていた。そんな中、09年にパパンドレウ氏(wiki)が首相就任。10年4月に巨額の財政赤字を隠蔽してユーロに加盟したことを明かし、金融支援を要請。米国住宅バブル崩壊等と相まって、ギリシャ国債を買っていた欧州各国を危機に引きずり込む(引きずり込むってのは適切でないかもね、買う方の投資判断/リスク管理が適切でなかったのも確かだから)。

 

ギリシャの危機感の薄さ:経緯と国民の意識

  • デフォルトに慣れきっている国民のジョーシキ

はじめてのデフォルトは紀元前377年、この200年のうちでも5回(1826年、1843年、1860年、1893年、1932年)経験。その結果、国民は以下のようなコメントをするように。

 若者に人気のギリシャのラジオコメンテーター、ディミトリス・カザキス氏(49)は「デフォルトになっても大騒ぎすることはない。以前にも危機はあったが、国はなくなっていない」と話した。一般市民は、ユーロ圏諸国がギリシャ支援策と引き換えに緊縮財政を求めていることに抗議デモを繰り返し、「腐敗政治から身を守る」との口実で脱税を正当化する人も多い。
腐敗横行のギリシャ、デフォルトにも危機感薄く

なんていうか、のんき…ギリシャが倒れたら欧州中がやばくなることなんて全然気にしてないって分かる。
そして公務員は公的融資の為の調査にきたEUとIMFの一団に対しバリケードを張ったり、9/19とか20にはゼネスト交通機関や役場、ゴミ収集、医師の一部によるもの)を行って妨害。財政再建(=公務員のリストラや一部民営化)を約束しないと融資してくれないという中なので、公務員は融資団の邪魔をしないと仕事がなくなるから行動の意味は分かる。

緊縮策で、月収3000ユーロ以上の公務員は賞与2ヶ月分がゼロに。3000ユーロ以下は1000ユーロのみの支給。例えば夫婦ともに公務員の家庭で、2 人の月収合計が4000ユーロならば、賞与8000ユーロが2000ユーロのみになるわけだから、大打撃。住宅ローンが払えない、子どもを私学から公立に転校させざるを得ないなど、深刻な問題を引き起こしている。IMFが乗り出したからには民間でも給与カットがおこるのではと不安が広がっている。ガソリンの税率は23%に。輸送費などにコストがかかり、肉屋からスーパーにいたるまで、物価高。二重苦のスタグフレーションがおきている。小売店は続々と店じまいをしていく。
ギリシャ危機の渦中から~財政危機はなぜ起こったのか?~ - 有馬めぐむ - Market Hack

個人レベルで、生活を守るために抗議行動するのは理解出来る。

だけど融資を受けて財政を持たせないとEU全体の危機が訪れる。

今回のデフォルトの原因:放漫財政

再建=歳出減と歳入増のための努力をしていない。

  • 歳出

前政権が票田確保の為に公務員の改革をさぼってきた。公務員は国民の3割で、給与・年金の待遇は破格とのこと。
 

  • 歳入
    • ユーロ加入で低金利にて資金調達が可能になったため、じゃぶじゃぶ借り入れした
    • 観光以外の自国産業を育てていない。対外収支もマイナス
    • 税金を集めるシステムが機能していない。国民、特に富裕層は納税を恥とすら思っている。

トルコに支配されていた時代、支配政権を弱体化させるために国民がこぞって脱税をした歴史が市民に染み付いている
日経ヴェリタス(11/10/23 2面)

ギリシャは貧富の差が激しく、富裕層は税金をほとんど払っていないのが現実である。アテネの最高級住宅地にはざっと250軒の豪邸があり、その多くがプール付きだというが、うち税金を払っているのは3軒のみだとされる。

また、「3分の1ルール」などと言われるものが罷り通っている。これは、例えば100万円の税金を払わなければいけないという時、3分の1を実際に納税し、残りの3分の1は賄賂に回す。そして最後の3分の1は払わずに済ませるのだ。
ギリシャの富裕層 3分の1しか納税せず、3分の1は賄賂に

脱税の為、領収書はきらないケースも結構あるとか。


 

現状

11/12/04のヴェリタス。

  • ドイツ人は『我々は働いて豊かになった。わいろ、脱税がまかり通るギリシャをなぜ助けなければならないか』
  • ギリシャ人は『ドイツはギリシャでしこたま稼いだはずだ。それなのに今になって支援を渋っている。みんなドイツのせいだ』

 

どっちの意見も間違ってない部分がある。
1990年代に年金支給開始年齢引き上げや増税という痛みを伴う改革のもと財政赤字を緊縮させ、真面目に労働を続けるドイツ人が、大した働かない&納税・年金未納状態でポルシェの国民一人当たり保有台数がヨーロッパ有数とか言ってるギリシャを救済したくない気持ちは分かる。
ドイツは輸出絶好調になる中、ギリシャはじめユーロ加盟国が不安定になったからこそ暴落した為替で稼げた。ベンツは世界中でお買い求めやすくなって(価格2/3とかになったんですって?)たけれど、ドイチェマルクのままだったら余裕で為替強くなっちゃって貿易の利益は薄くなっていただろう。ユーロ圏にいたからこそ現在の好景気がある。ただ、ドイツ国民でも輸出産業で儲けたひとばかりでないから、そこで利を得てないひとはどうしたってギリシャへの融資に賛成なんて出来ないだろう。


適宜追加します。

ドイツの利の得方とギリシャの放蕩っぷりはこの記事が解り易かったです(2012/1/5追記)