2004年の春休み


20歳の終わり頃、思いつきで上京して、2週間父方の叔父の家に泊めてもらいあちこち遊び歩いたことがあった。
男性ひとり暮らしの2DKは散らかり放題、「洗濯めんどくさい」とか言ってユニクロでぱんつ買ってきてはそのまま捨てる、そんな暮らし方。勿体ないってレベルじゃねえと思った。
ある日、なんか買ってやるっていうから2人で町田を歩き回って、アロウズでうす緑色のカシュクールを買ってもらった。気に入りすぎて毛玉が数えきれないくらいできるくらい着て、去年シミが出来てようやく捨てた。
またある日、地元の馴染みのバーに連れていってもらった。1杯2000円のウイスキーにびびった。まるい氷もはじめて見た。「結婚するならいろんなひととセックスしてからにしなさい。離婚するカップルの3/4だかは性の不一致が原因らしいから」とか言われて、親族に何言ってんだこのおっさんと思った。(今になって考えればいらん不幸がないようにアドバイスしてくれてたのか…な…?)軽口ばっかりいう人。
 

高校の同級生と桜を見たり、都路里で抹茶パフェ食べたり、大学にお邪魔したり。買ったばかりのLOMO LC-Aを振り回すのが楽しかった(そしてそれは、その1年後、就活中に西武新宿駅そばのロッテリアに置き忘れてそのまま出てこなかった)。
 

帰りは青春18きっぷを使い、太平洋側を鈍行でだらだら帰った。福島で初老のご夫婦とお喋りしてアメ貰って。沢山の人が乗ったり降りたり、その中で方言がすこしずつ変わっていく面白味。盛岡の健康ランド、仙台のマンキツに泊まって、貧乏旅行。メディアテークに行きたかったのに休業日で、すごいがっかりしたことを覚えている。好きだった日記サイトの人がよく書いてたベローチェに行って、ソフトクリームをもしゃもしゃ食べてひとりでニヤニヤした。特急はまなすの普通席で2シート使って寝た時に体の節々が痛くなった。楽しい春休みになった。
 

先刻、叔父が亡くなったとの報を受けて、あの春のことを思い出した。
その後、会ったのも4・5回だけか。最近の思い出と言っても、自分の3年前の結婚式で、デザートの中に当たりがあったらスピーチしてもらう的なやつで話してもらい、場を盛りあげてくれたことか。その時は大丈夫なのか…とか思ったけど、さすがバブル期に青山で社長やってただけあったと思った(ちょう失礼)。それから「飲みに行こうよ」って言ってたのに、娘が産まれてから電話で話して「顔見にきてね」って言ってたのに、言うだけで終わっちゃって、最近LINEのアプリをダウンロードしたら叔父さんの名前が出てきてさすが若いな(笑)って思ってたのにメールもしないで。なんでもっと会っておかなかったんだろうって、もうそれしかない。どうしてもう会えないの。まだチャンスいっぱいあるって思ってたよ。私、あの時何が美味しいのって首を傾げたあのウイスキーの味も、ちょっとは分かるようになったと思うんだけど。おじさん。なんで死んじゃったの。若すぎるんじゃないの。どうして五十路の初めでいなくなっちゃうのさ。
あー、遣りきれない。
だけど書くことで少し整理がついた気がするし、父と祖父母の助けを少しでもしていかなくちゃ…